2025年7月25日の米国株式市場は、ビッグテックの決算とAI(人工知能)への巨額投資への期待が交錯する中、主要3指数が異なる方向を向く展開となった。S&P 500とナスダック総合指数が終値での最高値を更新する一方、ダウ工業株30種平均は反落。個別銘柄の決算内容が株価を大きく左右する、選別の色が濃い一日となった。
指数動向:ハイテク主導の市場と重石になったダウ銘柄
S&P 500は前日比0.1%高、ナスダック総合は0.2%高と、それぞれ今年13回目と14回目の最高値更新を達成した。市場を牽引したのは、好決算を発表したアルファベットなどのハイテク大手だ。AI分野への継続的な投資が成長期待を支え、相場全体の上昇をリードした。
一方で、ダウ平均は前日比320ポイント安と勢いを欠いた。特に、ユナイテッドヘルスグループ、ハニウェル、IBMの3銘柄が合計で約309ポイントもの押し下げ要因となった。特にユナイテッドヘルスは、司法省からの調査開示が嫌気されて急落し、年初来でダウ平均を約1400ポイントも押し下げる重荷となっている。
明暗分かれた主要企業の決算
【好調・AI投資加速】
- アルファベット (GOOGL): 市場予想を上回る好決算を発表し、株価は約1%上昇。AIインフラへの投資を大幅に拡大し、年間750億ドルに加えてさらに100億ドルを投じる計画を明らかにした。この巨額投資は、AI開発競争で勝ち抜くという同社の強い意志の表れと受け止められている。著名投資家のジム・クレイマー氏は、ビッグテックのAI投資は「まだ足りない」とし、「勝者が全てを奪う」世界だと指摘。メタ、アマゾン、アルファベット、マイクロソフトの4社は、2025年に総額3200億ドルをAIとデータセンターに投じる見込みであり、この競争が市場の大きなテーマであり続けることを示唆した。
【見通し懸念・株価急落】
- テスラ (TSLA): イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が自動車販売の継続的な減少やEV税額控除終了の影響に触れ、厳しい見通しを示したことから、株価は8%以上の急落を記録した。
- IBM (IBM): 利益は市場予想を上回ったものの、収益の柱であるソフトウェア部門の売上が予想に届かず、投資家の期待を裏切る形となり株価は約8%急落した。
- ハニウェル (HON): 第2四半期の売上高と利益は市場予想を上回ったものの、市場全体の不確実性や特定の事業分野におけるプロジェクトの遅れなどが懸念され、株価は6%下落した。
- チポトレ・メキシカン・グリル (CMG): 既存店売上高の見通しを下方修正したことが嫌気され、株価は13%もの大幅な下落となった。
- インテル (INTC): 第2四半期の売上は予想を上回ったが、8億ドルの減損処理が響き、最終損益は29億ドルの赤字となった。新CEOのもと、「顧客需要がある場合にのみ工場建設に投資する」という、より規律ある投資への方針転換を発表した。

市場の新たな注目テーマ:「PARK」銘柄の躍進
ジム・クレイマー氏は、現在の市場で勢いのある銘柄群として、パランティア (Palantir)、アップロビン (AppLovin)、ロビンフッド (Robinhood)、コインベース (Coinbase) の頭文字をとった「PARK」という新たな略語を提唱した。
これらの銘柄は、AIブームや暗号資産市場への期待を追い風に、過去1年間で株価が大幅に上昇。特に個人投資家からの人気が高く、コールオプション(買う権利)の取引も活発化している。しかし、その一方で株価収益率(PER)は非常に高く、市場からは「割高」との見方も出ており、今後の動向が注目される。
銘柄 | 概要 | 注目ポイント |
Palanter | データ分析プラットフォーム企業。政府機関や大手企業を顧客に持つ。 | AIプラットフォーム(AIP)の導入拡大、国防総省との大型契約。 |
AppLovin | モバイルアプリのマーケティング・収益化プラットフォームを提供。 | AIを活用した広告技術、好調な業績と高い収益性。 |
Robinhood | 手数料無料の株式・暗号資産取引アプリで若年層に人気。 | 暗号資産取引の収益が急増し、黒字化を達成。 |
Koinbase | 米国最大手の暗号資産取引所。 | 暗号資産市場の回復とともに取引量が拡大、収益も改善。 |

政治の影:トランプ大統領、FRBに異例の利下げ圧力
市場が注目するもう一つの動きとして、トランプ大統領が20年ぶりに連邦準備制度理事会(FRB)本部を訪問し、パウエル議長と会談した。表向きは改修工事の視察とされたが、市場では事実上の「利下げ圧力」と受け止められている。トランプ大統領は記者団に対し、利下げが実現すれば米国経済はさらに好調になるとの持論を展開した。
さらに、トランプ氏を支持する一部の投資家が、金融政策決定会合(FOMC)の非公開性を巡りFRBを提訴するという異例の事態も発生しており、FRBの独立性を巡る議論が再燃する可能性もある。
25日の市場は、AIという未来への明るい展望と、各社の業績やマクロ経済、さらには政治的な不確実性という現実が複雑に絡み合った様相を呈した。S&P 500とナスダックの最高値更新はハイテク主導の強さを示す一方、ダウの反落は市場全体が楽観一辺倒ではないことを物語っている。来週以降も、主要企業の決算発表とAI関連のニュース、そしてFRBの金融政策を巡る動向が市場の焦点となりそうだ。



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